昨年11月に登場した日本発の無料スマホゲーム「旅かえる』が中国で大ブームになっていることをご存知でしょうか。
これまでのダウンロード総数は約3500万件、うち90%以上が中国、残り10%が日本、その他となっています。
開発したのは、名古屋に本社を置くベンチャー企業「ヒットポイント」で、従業員約30人と小さいですが、2014年にも同アプリ「ねこあつめ』で2200万ダウンロードを記録し、現在でも書籍や関連グッズなどが販売されるなど新進気鋭の会社です。
このゲームが大ヒットしたきっかけは、「究極の放置系」で あることです。ゲームスタートに必要な手続きは3つ ①主 人公のカエルに名前を付けて、②庭先に生えてくるクローバーを収穫し、③そのクローバーを通貨として、お店でお弁当や道具など買い揃えてカエルの旅仕度をする、そうするとカエルはいつの間にか旅立ち、日本各地のお土産や思い出の写真を送ってきてくれます。
いつ帰ってくるか分かりませんし、どこに行ったのか後を追うこともできませんが、 カエルの旅路を想像しながら楽しみに待ちます。
ヒットポイントは、このゲームのターゲット層を10~30代の女性としており、実際に利用者の80%以上がそうです。特に、中国国内では激しいバトルや競争が繰り広げられるスマホゲームが多い中で、女性をターゲットにした手間の掛からない「癒し系」ゲームの躍進は、新たなるビジネスチャンスの活路とも考えられます。
また中国では、10~30代は 「90後」(1990年以降に生まれた世代を示す)と呼ばれており、ほとんどが一人っ子のため、欲しいものは何でも手に入って育ってきています。
加えて、改革解放後の高度経済成長期でもあったことから、親世代の生活水準も高く、「成功」よりも「幸福」を重視する傾向です。
ただ自由気ままに旅をする「旅かえる」は、そんな彼らの価値観にフィットする. 受け入れやすいゲームだったのかもしれません。 カエルが旅先で撮影してくる日本各地の観光風景は、ユーザーである中国人の注目を集めており、その消費動向にも影響を与えている可能性があります。
特に、プレイ中に 頻繁に登場する名古屋は検索回数が1ヶ月で2倍になるほか、秋田の入道崎灯台、長野の善光寺、京都の天橋立などは、今年の春節での旅行先として話題になりました。
旅路をゆく一匹のカエル、日本文化の発信を担っていると思うと心温まる一時です。