6月15日に米財務省が発表した4月末時点の米国債保有高では、ロシアが487億ドルとなり、3月の961億ドルから 474億ドル売却したことが判明しました。
5月に米10年債利回りが3.10%台まで上昇した要因のひとつとして、米連邦公開市場委員会(FOMC)の追加利上げ以外に、ロシアによる米国債売却があったと思われます。
ロシアが米国償の保有高をほぼ半減させた背景には以下の理由が挙げられます。
①米国による経済制裁に対する報復措置
②米国による資産凍結という伝家の量刀を回避
③中国による人民元建て原油先物取引の開始
中国の人民元建ての原油先物取引の開始は、米国の「ペトロダラー」に担保された通貨覇権の牙城を切り崩しにかかっているといえる。
さらにトランプ米政権によるイラン核合意の離脱により、イランからの原油輸出をドル建てから人民元建てにかえて、ロシアと中国が輸入するのではないかと憶測が強まっています。
米中の貿易戦争勃発の可能性が高まりつつある中、年初に中国の罹天凱眺米大使は、米国の対中輸入関税措置に対して, 「米国債の購入減額の可能性など全ての選択肢を視野に入れている」と警告し、「米国債売却カード」を切る可能性を示唆しました。 1997年6月、橋本首相(当時)が米コロンビア大学での講演で、米国債のショートで捕まったヘッジファンドによる誘導質問に答 える形で、「大量の米国債を売却しようとする誘惑にかられたことは幾度かある」と述べ、米国債が急落し想定通りの回答を引 き出したヘッジファンドは、米国債のショートポジションを手仕舞うことができたと言われています。
米国債の発行残高は約14兆4700億ドルでずが、外国政府の保有は約4兆300億ドルで30%弱となっており、保有高1位の中国は1兆1819億ドル、2位は日本の1兆312億ドルと発表されています。
トランブ米政権の対中輸人関税措置に対して、習近平中国国家主席が対米輸入関税措置という報復措置に加え、米国債売却という「伝家の宝刀」を抜くのか注目されるところです。